長編シナリオが崩れるのは、出来事が足りない場所ではなく、向きが変わらない場所です。このノートでは、その向きが変わる場所を何と呼び、どこに置くのか、そして広く使われる5つの構造がその配置をどう違えて見るのかを整理します。
ビートは物語の最小の劇的単位です。ある場面が終わったとき、人物が立っている位置が始まりと違っていれば、その場面はビートを一つ通過しています。
よくある誤解は、これを出来事の大きさで測ることです。爆発が起きて人が死んでも、人物が同じ方向へ歩き続けるならビートではありません。逆に、食卓でひと言を聞いて、それまで信じていたものを手放したなら、何も起きていないその場面がビートです。基準は規模ではなく向きです。
そのため初稿を読み返すときの問いは一つに絞られます。この場面のあと、人物は直前と違うものを望んでいるか、違うことを知ったか、違うものを失ったか。三つとも当てはまらないなら、その場面はまだ居場所を見つけていません。
構造を決めると創作が縛られるという心配はもっともです。ところが構造が実際にしているのは、何を書くかを決めることではなく、どこが空いているかを見えるようにすることです。
長編は二時間を持ちこたえなければなりません。最初の三十ページをうまく書いても、中盤の四十ページで物語がその場を回ってしまうことはよくあります。書いている人はその中にいるので見えにくいのです。場所を先に取っておくと、その空白が目につきます。埋めるか空けたままにするかは、その次の判断です。
構造を選ぶことは、答えを選ぶというよりどの問いを受けるかを選ぶことに近い作業です。以下の5つは、それぞれ違う問いを投げます。
| 構造 | 推進力 | 向く題材 |
|---|---|---|
| セーブ・ザ・キャット15ビート Blake Snyder, 2005 |
主人公の内的変化 — 望むものと必要なもののずれ | 人が変わっていく物語。テーマと出来事を一つの軸で束ねたいとき |
| ヒーローズ・ジャーニー12ステージ キャンベル → ボグラー, 1992 |
外的な冒険を通じた内的成長 | 旅立って戻る物語。冒険と成長が並んで進むとき |
| 状況駆動11ビート | 外部の状況からの圧力。人物が状況を押すのではなく、状況が人物を押す | 災害・犯罪・生存など、盤面が先に敷かれる物語 |
| 関係アーク10ビート | 二人のあいだの関係の変化そのもの | 二人の距離がそのまま筋になる物語。両方が欠点を抱えるとき |
| 時間変奏6フェーズ | 反復のなかの微細な変奏が積み重なって届く状態 | 大きな出来事がなく、時間が人物を変えていく物語 |
5つの構造を同じ上映時間の上に重ねたもの。一つのマスがビート一つ、太いマスが分水嶺です。5つとも中盤で折れますが、折れる場所と前後の密度が異なります。
前の二つは長く使われてきた標準で、後の三つは、その二つでは掬いきれない物語のために Movie Kick が別に立てたものです。5つのうち4つは出来事・関係・内面の変化が物語を押します。時間変奏だけは蓄積が押すので、各節で問うのは何を失ったかではなく何が積もったかになります。
選びにくいときはこう考えてみてください。この物語を一文に縮めたとき、主語は何か。人なら前の二つ、状況なら状況駆動、二人なら関係アーク、時間なら時間変奏です。それでも決まらないなら、長く選ぶより先に一つで書いてみるほうが速いです。構造は差し替えられますが、書かなかった原稿は直せません。
Movie Kick はアイデアから始めてあらすじと人物を立て、そのあとのプロット段階でこれらの構造から一つを選んでもらいます。選ぶと、その構造が求める場所が空欄として並び、それぞれの欄がこの作品では何になるべきかを一緒に提案します。場所を動かすことも消すこともいつでもできます。
大事なのは埋まった欄ではなく、空いたままの欄です。構造を置く理由もそこにあります。